…そんなこんなでステキに手頃な物件をウッカリみつけた
ことにより、喫茶店を始めようと思い立った私です。思い
立ったのち、しばらく逡巡したり嫁と相談したりしたりして
から、意を決して不動産屋の戸を叩いた。

「すみませーん」
「はい。」
「あ、えーっと、表の張り紙をみたんですけど」
「はい。」
「…えーっと、まだその物件は空いてますか?」
「はい。空いてます。」
「…。」
「…。」

し、敷居が高ぇ。皆さんは商業用の物件を借りたりしたこと
がおありでしょうか?私は初めてです。居住用の物件は幾
度となく借りたり返したりしたことがあるので、その手の不動
産とのやりとりに困ることはそう無いのだが、商業物件の不
動産屋というものは、なんちゅーか、押してこないってゆー
か、なかなか相手してくれないってゆーか、忙しそうってゆー
か…ココだけ?よく判らないが。しかし私も意を決しちゃった
ので後にも引けない。

「うーんと、えーっと、その物件、見れますか?」
「あ、見る?じゃあ、西調布1番街ね、判る?」
「判ります。」
「そこの、パン屋さんと花屋さんの隣だから。」
「はい。」
「…。」
「…。」

以上?…以上っぽい。それじゃあ取るものも取りあえず行っ
てみよう。トコトコ。不動産屋と物件は2分と離れていない。
見てみた。うん、シャッター閉まってる。裏に回ったら裏口が
あったけど念の為ノブを回したが当然開かない。まぁそうだ
よね。外側からシゲシゲ物件を眺めて、そして不動産屋に
戻った。

「あ、見ました。」
「見た?あんな感じ。」
「なるほど。」
「どう?」
「えーっと、シャッター閉まってました。」
「うん。シャッター付いてる。」
「なるほど…。えーっと、中は見れませんので?」
「大家さんがいないと見れないんだよね。」
「あ、なるほど。では事前に連絡して…。」
「そういうこと。」
「ちなみに、図面とかは?」
「ないよ?」
「あ、え、あ、そうですか。」
「2間3間、フツーの。使いやすいよ?2間3間。」
「あ、なるほど。」
「いやぁ、前の人が20年以上借りてたんで、書類とか
 無いんだよね。」
「なるほど。」
「じゃ、ヨロシク検討して。」
「あ、はい。ありがとうございます。」

出された。まぁこれ以上聞くことも答えることもないのでそう
いうことだろう。おそらく2間3間で八坪というのは、こういう
物件ではドえらくスタンダードなのだろう。慣れた人は店構え
とそのワードで仮押さえとかしちゃうのかもしれない。べ、
勉強になります。不動産屋の人もつっけんどんだが悪い感じ
もしないので、誰に対してもこんな感じじゃないかと想像で
きる。よく判らないけど。あと少なくともこの不動産屋は大家
から鍵預かってない。…この物件だけかな?店舗ってそうい
うものなのかしら?謎は深まる…。

とりあえず次の日に中を見せてもらうようお願いしに戻った
私なのだった。(快諾してくれた)