…一般的に、料金が相場より安いのには理由がある。
型落ちとかセルフサービスとか納得がいくものやコピー・
バッタ物販売とか無免許とか犯罪的な物までその理由
は様々だ。でも理由なく高いことはあっても理由なく安
いことはまず無い。さて、今回の内装屋さんは?

私見だが、この内装屋さんの安さの最大の秘密は人件
費の削減だ。出来ることを自分ひとりでこなすので、余
計なお金がかからず相場より安く上がるのだと思う。た
だ、どこの中小企業もそうであるように、人件費の削減
は相応のデメリットもある。例えば一人の仕事量が増え
るのでひとつひとつの仕事の質と効率が低下する。今
回で言うと内装屋さんは受付から営業からサポートセ
ンターから一人でこなしてるのでなかなか連絡が繋が
らない。そして出来るのと得意なのはまた別問題だ。
この内装屋さんは恐らく職人さんの中では群を抜いて
愛想が良くシロ-トのお客さんにも優しく説明ができる
ほうだと思う。でもあくまで職人さんにしては、だ。「なん
しか内に秘めたな、今。」と思われる場面が散見する。
そーゆーの、職人さんから散見すると、ビビります。

そんなこんなで不意に音信不通になった内装屋さんだっ
た。しばらく待ったが待ちきれず、紹介してくれたBBに
相談してみたり、不動産屋に回答を待ってくれと三日おき
に電話してみたり、ヤキモキヤキモキヤキモキヤキモキ
して、もう押さえでどこか他の業者さんにも見積もり出し
てもらおうかとか考えていた時、不意に内装屋さんから
連絡が入った。

「やぁ、すみませんお待たせして。やっと見積もりできま
したんで、メールで送りました。確認してください。」
「あ、ありがとうございます!」
「なんども連絡させちゃってすみません。すごく立て込
んでしまって…。」
「なるほど、そうだったんですか。」
「明日か明後日なら身体空いているので、詳しい打ち合
わせなど…。」
「早!了解です。」

なかなか緩急をわきまえている内装屋さんだった。
送られてきた見積もりを見た。図面付き。さしあたって何
も省いていないように見えるのに、150万円チョイと、前
回の話より大分安く見積もってくださった。

「…これは、さらに自分でやったりすれば、
どうにかなんとかなるかなぁ…。」

そう独りごちた私は、不動産屋に契約を希望する旨を
電話で伝えたのでした。